本気と本気が隣に並ぶ。
経営が加速する。
上代 雄一郎
税理士を目指したのは、成り行きなんです。大学で簿記を受けたら難なく受かり、たぶん得意分野なんだろうと。そのままできるだけ得意な方へ得意な方へと、裏を返せば苦手なことは避ける方へと進んできたら、この職に就いていました。
Colorzへの入社は紹介予定派遣からです。当時の私の仕事内容は書類整理からの帳簿起こし、そして申告書の作成。言わば非常にベーシックな税理士補助業務でしたから、正直「Colorzである必然性」はあまりなかったんですよね。とはいえ当時も私なりに考えていたことがあって。それは、どう決算書をデザインすれば業績改善のきっかけになるか、経営の役に立てるかということ。もっとできるはずだという思いはあれど、それに見合うスキルが追いついていない時期で、周りの人のやり方を見たり、率直なフィードバックをもらったり、古い記録を紐解いたり。社内のあらゆるリソースを使って研鑽を積みました。そして数年後、ようやくスキルも思考する体力も身についたと感じる頃には、財務コンサルタントとしてキャリアを歩み始めていました。
Colorzの掲げる「財務戦略コンサルティング」の中身はいくつかに分かれています。たとえば創業時からある柱の一つは企業再生。いわば不具合のあるクルマ(=企業)を一回止めて、全部点検して修理して、もう一度走らせるようなスポット的な仕事です。一方、私が得意とする成長支援は、月次決算をベースにコツコツとガソリンを入れ、アクセルを踏んだり緩めたりしながら目的地まで走らせていく仕事。やや地味ですが、通常の運転がうまくいけば財務危機にも陥りにくい。企業再生の世話になることもないのです。
ただ、こうしたコンサル業務だけがColorzの仕事であると決め打ちしているわけではありません。お客さんのために必要とあらば、なんでもやる。それが良さだと思っています。たとえば以前、思いがけない大企業の記帳代行の仕事が舞い込んできたことがあります。かねてより当社がコンサルで入っていた会社なのですが、そもそものベースである記帳がしっかりできていないから、コンサルも何もできないのだと。記帳というのは単純作業ですから、Colorzの提供価値のど真ん中ではありません。しかも膨大で、引き受けたら社内で他にリソースを割けなくなる。無謀だなぁ、と思いました。でも「お客さんが困っている」という事実を前に、断る選択肢はなかったんでしょうね。確かに、引き受ければお客さんは間違いなく助かるし、記帳の精度が上がることでコンサルの精度も上がる、会社全体の価値が上がる。よし、わかった。やろうじゃないか。メンバーで手分けし、泥臭く完遂しました。お客さんはその後業績改善し、今もお取引は続いています。
個々のスキルは比較的順調に身についた一方、苦労したこともあります。特に習得に時間がかかったのが、経営者の隣に立って「一緒にやる」というスタンスです。これは、経営責任はあくまでも経営者あるとした上で、私も当事者として共に進むということ。経営者の最良の相談相手になることでもあります。
実は、いい相談相手になれるかどうかの勝負は、相談されるよりも前に半分以上決まっています。何を聞かれてもその場ですぐ答えられるよう、事前に一通り勉強しておくのです。会話が進み、専門性が高くなってきたら各分野の信頼できる専門家をきちんと紹介して、自分も引き続きフォロー。これを繰り返していくと、「とりあえず中川に言ってみよう」という関係が定着してきます。そしてふとした社長の一言の中に、本質の一端を感じたら、そこからぐいっと踏み込んで問いを重ねていく。踏み込む際には社長に逃げを許しません。逃がさないし、私も逃げない。社長が問題を考え尽くし、納得のいく経営判断に落とし込むまで、とことん壁打ちの相手になります。 お客さんからは、「わかってくれるね」とよく言われます。その真意は「問題を的確に掴んでくれたね」であり、的確に掴める関係性を築いたことへの評価とも受け取っています。
2021年から、私はアライアンスという立場になりました。会社との関係が、雇用から業務委託に移ったということです。責任主体を自分に置いてキャリアを歩み始めたのは一つのターニングポイントだったと思います。
ベテランになると独立・開業する人が多い世界で、私が今もアライアンスとしてColorzの仕事を継続する理由。それは「自分に合った仕事ができるから」に他なりません。当社では幅広く仕事を受けた上で、内容に応じて最適なメンバーに振り分けています。メンバーは常に能力を発揮しやすい仕事ができるし、お客さんは常に適任者に担当してもらえる。そう、「税理士だから」というだけで、本当に課題を解決してくれるかわからない人に依頼してしまうリスクをお客さんは回避できるわけです。
理想を言えば、私が得意も不得意もなく、「全部任せて!」と言えたらいい。必死に闘う経営者たちを、一人残らず私が支えられたらいい。無理だとわかっていても尚、願いたくなる気持ちもあります。ただ、そんな自分だからこそ、ここで良かったんだと思います。Colorzという組織と、それを支える多様な専門家たちがいるからこそ、自分一人では対応しきれない部分までちゃんとカバーできるからどんな道を選んでも、私がいるし、私たちがいます。そう胸を張る私を横目に言える喜びを胸に、経営者たちの志の実現を支え続けることができたら、この上もなく嬉しいです。
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