本気と本気が隣に並ぶ。
経営が加速する。
上代 雄一郎
父が税理士で個人事務所を持っていたことから、なんとなく自分も似たような道に進みました。全く同じ税理士でなく、会計士を選んだのは、父とはちょっと違う角度で道を深められるかなと思ったから。経営も、僕だったらもうちょっと上手くやるかもな、なんて不遜なことも思いながら、実際に継ぐかどうかは決め切らないまま資格を取りました。
1社目は大手の監査法人。2社目がColorzです。Colorzに来てからは結構な無茶振りにも応えてきた自負があって(笑)、北から南まで「行ってこい!」と言われれば即「行きます!」。人に会い、現場を見ては、「何が問題の本質だ?」と思考しました。過酷な案件もありますが、「この経験、どうやって将来の事務所経営に活かそうかな」と思えば俄然楽しくなってくる。あ、僕は経営を支えるだけじゃなくて、経営自体に興味があるんだ。そう気づいてから次第にビジョンが明確になり、今は「いずれは父の事務所を継ぐ」と表明し働いています。
ちなみにColorzの入社前は、どんな経験ができそうかなんてほぼ考えていませんでした。入社した理由も、内定が一番早かったから。意思決定が速いのはいいことだな、くらいの印象でした。
「はやくやる」のがColorzとして大事にしている価値観であったことは、入社して知りました。確かにメールの返事ひとつだって早い方がいいに決まっているし、僕たちの仕事が遅いとお客さんの意思決定が遅れ、ビジネスチャンスを逃すかもしれない。スピードは価値、その通り。僕も常に意識するようになりました。
一方で、企業の経営に加速をかけるときには、従業員の誰かを振り落としてしまわないよう少し慎重になる必要があります。というのも、いざ会社が成長し始めると、中にいる社員たちも考えるべきことが変わってくるからです。たとえば20億の会社の経理と100億の会社の経理は仕事内容が違うし、求められる能力も違う。上場を目指すなら細かいテクニカルな処理もできなくてはいけない。そうした変化への対応を置き去りにして、会社の規模だけ急に大きくしても破綻してしまいます。だからこそ、教育支援……というと上から目線すぎますが、少なくともペースを掴むまでは、現場の人と同じ歩幅で歩むことを心がけています。具体的には相手の仕草や表情をよく観察し、理解につまずきそうなら助け舟を出して、時には視点を引き上げて。するとだんだんテンポ良く進めるようになってくるんです。ここまで来れば、本当の加速の始まりです。
とはいえ、最初から相手軸のコンサルができたわけではありません。もちろん、「意見を押し付けてはならない」「自分の考えが100%正しいわけではない」と思う程度の謙虚さはありました。が、いざ人と対峙すると、僕の主張が強くなってしまったり、話を聞きながら内心「でも僕が正しいでしょ」と思っていたり。
Colorzに来て、徐々に変わりました。きっかけは、お客さんの発言から議論の流れが変わり、最終的に僕の想定とは異なる経営判断に至ったこと。しかもその内容が「すごくいい」と思えたことです。そうか、僕の「専門家視点」は、結局視点の一つでしかないのか。視点が変われば結論も動く。ならば、経営者が腹の底から納得した経営判断に至れるかは、どれだけ多くの良い視点を場に出せるかにかかっているのではないか。
以来、常にできるだけ多くの人の価値観、視点、マインドセットを取り込みながら提言するようになりました。もちろん、自分の考えも大事にします。ただし、そのまま相手にぶつけるのではなく、先に「そもそも僕はなんでこう思うんだろう?」と背景を解体し、できるだけ相対化しておくんです。そして相手との間にそっと置いてみて、さらなる意見を引き出す道具として使う。磨かれた視点を行き来し、経営者が自分で選び、納得して進んでいく。その場面に立ち会えるのは、仕事の醍醐味です。
会計士なのに、ちっとも数字の話をしていませんね。でも実際、お客さん一人一人を家族のように思い浮かべながら、何をすべきか考える時間が数字と向き合う以上に長かった。そんな実感があります。
そろそろ父の事務所の仕事も始めるつもりです。Colorzは辞めずに、並行していく予定です。やはりColorzのお客さんは面白いし、地方の個人事務所では経験しづらい規模の案件もできる。いい意味でクセの強い仲間と働けるのも得難い魅力です。ここでの経験を地元に還元し、事務所経営の中で培った視点や学びをまたColorzのお客さんに還元する、そんな循環を生み出せせたらと考えています。そしていつか、地域に根差した日本の職人技を、海外へと届ける架け橋にもなれたら。複数の軸を持つことで視野を広げ、異なるもの同士を繋いだり、掛け合わせたりで価値を生み出していくのは今後も同じなのだと思います。
個人としては、何か困ったら気楽に「あの人に聞いてみようかな」と連絡できる存在になるのが目標です。ほら、どんな話を振ってもなんとなく実りある会話ができる人って、いるじゃないですか。喋っているうちにヒントが掴めて、やりたい気持ちがどんどん湧いてくる。はやる心という名の加速。全てのはじまりとなるその瞬間をつくれる人に、僕はなりたいのだと思います。
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